カッシーニ
土星探査機カッシーニが、土星周回軌道に入った。
「35億キロの道のりを経て」といわれても、ピンと来る人がいるのだろうか?おそらく大抵の人は、はるか彼方の惑星に一つの探査機が到着しようとしているということ、その様子を、漠然と想像するだけだろう。
むろん私もその一人だ。太陽と地球の平均距離が1億5000万キロだから、その何倍…などと考えてみても、単なる数値が導き出されるだけで、今ひとつ実感ができない。すごいと思うことさえ出来ないほどだ。
ただ、その想像を絶するほどの道程を計算し尽くし、ちっぽけな探査機を見事土星へと送り届けた、その技術のすごさだけはわかる。そして、7年前に地球を旅立った探査機が、空の彼方に点のようにしか見えない惑星に、今ようやく到着しようとしている、…そう考えると、胸が熱くなる。
7年前、NASAのJPLを訪れたときに、旅立つ前のカッシーニを見た。NASAの広報担当者が、あれが数ヵ月後、土星に向けて出発するんですよ…なんてことを教えてくれた。クリーンルームの中のカッシーニは、白衣のようなものを来た技術者達数人に囲まれ、厳つい体をさらしていた。こういう探査機も、一つ一つ誰かの手で組み立てられるんだな、と当たり前のことに妙に感心したのを覚えている。
そのカッシーニが、今、土星にいる。
科学者達にとってはこれからが本番だ。カッシーニは今後4年の間、ボイジャー以来の貴重な情報を次々に送り届けてくれるはずであり、それこそがこのミッションの目的だ。
でも私は、カッシーニが無事に到達したということで、すでに胸がいっぱいなのだ。
JPLで見かけてから7年。あれから私の生活には様々なことが…一つ一つのことを覚えていられないくらい、たくさんの出来事があった。その間もカッシーニは、漆黒の闇の中、ただひたすら土星を目指して飛行しつづけ、地球の技術者達は、それをささえ続けていた。
それだけでも、もう十分だ、などと感傷的に感じてしまう私は、桁違いの時間的・空間的スケールで考えることが求められる宇宙開発関係者には、到底なれそうにない。
※写真はカッシーニからの映像・CGじゃないよ!
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